2026.06.01
- 基礎知識
- ベアリング
ベアリングのシールはなぜ必要?異物混入とグリース漏れを防ぐ仕組み

ベアリングのシールは、軸受内部への異物侵入とグリース(潤滑剤)の漏れを防ぐ部品です。シールがないとわずかな粉塵や水分でも軸受は急速に摩耗し、寿命が大幅に縮みます。本記事では、シールが必要な理由と、接触式・非接触式・シールドといった種類ごとの仕組み・選び方をわかりやすく解説します。
- ベアリングにシールが必要な理由と、シールがないと何が起きるのか
- 接触式・非接触式・シールドの仕組みと特性の違い
- 使用環境に応じたシールの選び方
01ベアリングのシールはなぜ必要なのか
ベアリングシールは、軸受の寿命を左右する2つの役割を担っています。それは「異物の侵入を防ぐこと」と「グリースを保持すること」です。
ベアリング(軸受)は、内輪・外輪・転動体(ボールやローラー)・保持器で構成される精密部品です。転動体と軌道面はごくわずかな面積で接触し、そこに油膜を作って摩擦を減らしています。この精密な接触面に異物が入り込んだり、潤滑剤が失われたりすると、軸受は本来の性能を発揮できません。
02シールがないとどうなるのか — 摩耗の連鎖
シールが機能しないと、わずかな異物やグリース漏れが引き金となり、軸受は連鎖的に劣化していきます。その進行は次のように起こります。
軸受メーカーの分析では、軸受の早期故障の多くが潤滑不良と異物侵入に起因するとされています。シールはこの2大要因を同時に抑える、最も基本的かつ重要な防御策です。
03ベアリングシールの種類と仕組み
ベアリングのシールは、大きく「接触式シール」「非接触式シール」「シールド」の3種類に分けられ、密封性と回転性能のどちらを重視するかで選び分けます。
接触式シール(ゴムシール)
ゴムなどの弾性材でできたシールリップ(縁)が、内輪に直接触れて密封する方式です。記号では 2RS・DDU・LLU などで表されます。すき間がないため防塵性・防水性が高いのが最大の特長です。一方、リップが接触しているぶん摩擦抵抗(トルク)が大きくなり、高速回転には不向きです。粉塵や水分の多い環境に適しています。

非接触式シール
シールリップと内輪の間にわずかなすき間を設けた方式です。接触しないため摩擦が小さく、高速回転に適しています。すき間があるぶん密封性は接触式に劣りますが、接触式より安価で、比較的クリーンな環境に向いています。

シールド(鋼板シールド)
金属(鋼板)製のカバーで軸受を覆う方式で、記号はZZ・2Zなどです。内輪とは非接触のため摩擦が小さく高速回転が可能で、ほぼメンテナンスフリーです。防塵性はありますが防水性は高くないため、ゴミは多いが水気の少ない環境に適しています。

ラビリンスシール
迷路(ラビリンス)状の入り組んだすき間を設け、異物が侵入しにくい経路をつくる非接触式シールです。摩擦・発熱が極めて小さく、高速・高温環境や大型軸受で使われます。

04種類ごとの比較 — どれを選べばよいか
シール選びは「密封性」と「回転性能(低摩擦・高速対応)」のトレードオフを、使用環境に合わせて判断することが基本です。主な3タイプを比較表で整理します。
| 項目 | 接触式シール | 非接触式シール | シールド(鋼板) |
|---|---|---|---|
| 記号例 | 2RS / DDU / LLU | — | ZZ / 2Z |
| 防塵性 | 高い | 中 | 高い |
| 防水性 | 高い | 低い | 低い |
| 摩擦トルク | 大きい | 小さい | 小さい |
| 高速回転 | 不向き | 適する | 適する |
| 主な環境 | 粉塵・水分が多い | 比較的クリーン | ゴミは多いが水気は少ない |
選定の考え方:水・粉塵が多い過酷な環境なら接触式、高速回転や低トルクが求められるなら非接触式・シールドが基本です。迷う場合は、使用環境(水分・粉塵・温度)と回転数を整理してから選ぶと判断しやすくなります。
05シール付き軸受を長持ちさせるポイント
シールは万能ではなく、使用条件を超えるとその機能を十分に発揮できません。性能を維持するための注意点を押さえておきましょう。
FAQ
※本記事の内容は一般的な技術情報に基づいて作成しています。記号の表記はメーカーによって異なります。具体的な数値・仕様は必ず使用する軸受メーカーの技術資料・取扱説明書を参照してください。