2026.06.02

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エア駆動ダイヤフラムポンプとは何か?仕組み・他ポンプとの違い・選び方まとめ

エア駆動ダブルダイヤフラムポンプとはなにか

エア駆動ダブルダイヤフラムポンプ(AODDポンプ)は、圧縮空気を動力源としてダイヤフラムを交互に動かすことで液体を移送するポンプです。電気を一切使用しないため防爆エリアでも使用でき、ドライ運転・自吸・固形物混入液への対応など他のポンプにはない特長を備えています。本記事では、その仕組み・特長・他ポンプとの違い・選定ポイントをわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • エア駆動ダブルダイヤフラムポンプ(AODDポンプ)の基本的な仕組みと構造
  • 他のポンプにはない独自の特長と、向いている用途・向いていない用途
  • 現場に合ったポンプ選定のポイント(材質・粘度・エア圧)

01エア駆動ダイヤフラムポンプとは何か

エア駆動ダブルダイヤフラムポンプ(AODD ポンプ)は、工場の圧縮空気を動力源として、内部の弾性膜(ダイヤフラム)を交互に動かすことで液体を移送するポンプです。

AODDポンプ

電気を一切使用しないため、防爆指定エリアや屋外設備でも安全に使用できる点が最大の特徴です。化学・製薬・食品・塗料・上下水処理など、幅広い産業分野で採用されています。さらに自吸性能を持ち、ドライラン(空運転)にも対応できる数少ないポンプの一つとして、多くの現場で選ばれています。

ダイヤフラムとは?

ダイヤフラムとは、ポンプ内部に設置された薄くしなやかな膜のことです。この膜が前後に動くことで、液体を吸い込んだり押し出したりします。その動きは人間の横隔膜(おうかくまく)と同じ原理で、息を吸うときに膜が広がり、吐くときに縮んで空気が外に押し出される動作と一致します。

横隔膜の動き

「ダブル」という名の通り、ポンプには左右に1枚ずつ、合計2枚のダイヤフラムが搭載されています。この2枚が交互に動作することで、途切れのないスムーズな液体の流れを実現しています。

ダイヤフラム材質の選定が寿命を左右するダイヤフラムは消耗品ですが、使用液・温度・圧力に合った材質を選ぶだけで寿命が2倍以上になることがあります。薬品用にはPTFE(テフロン)、油脂用にはニトリル(NBR)、酸性液にはEPDM、食品・汎用にはサントプレーンが代表的な選択肢です。

02駆動の仕組み:2ステップで理解する

AODDポンプの動作はシンプルな2ステップで成り立っています。この仕組みを理解しておくと、トラブル発生時の原因特定や適切な運用にも役立ちます。

ダイヤフラムポンプの駆動原理

1
液体を吸い込む
エアバルブの切り替えによって片側の空気が排出され、連結されたダイヤフラムがもう一方の空気圧により後ろに引かれます。これにより液室内が負圧(真空に近い状態)になり、吸込側のボールバルブが開いて液体がポンプ内に吸い込まれます。同時にボールバルブが逆流を防ぎます。
2
液体を押し出す
次に空気圧でダイヤフラムが前に押されると、内部の空間が縮小して液体が圧縮されます。出口のバルブが開き、液体が吐出口から押し出されます。入口側のバルブは閉じて逆流を防ぎます。

なぜ「ダブル」なのか?この2ステップが左右のダイヤフラムで交互に同時進行します。右が吸っているとき左が吐き、次に切り替わる…この繰り返しによって流れが途切れず、スムーズな移送が実現します。シングルダイヤフラムと比べ、脈動が少なく安定した流量を確保できる点がダブルの大きなメリットです。

03AODDポンプ 5つの特長

AODDポンプが多くの産業現場で採用される理由は、他のポンプにはない複数の特長を同時に備えているからです。

電源不要・防爆対応圧縮空気だけで動くためモーターや電気制御が不要です。防爆指定エリアや屋外設備、電源のない仮設現場でも安全に使用でき、可搬性にも優れています。
シールレス構造で液漏れリスクを低減メカニカルシールやグランドパッキンを使用しないシールレス設計のため、液漏れの原因となる部品がありません。薬液・腐食性液体・危険物の移送でも安心して使用できます。
ドライ運転(空運転)に強い液切れが起きてもポンプが壊れにくい構造です。遠心ポンプやスクリューポンプでは空運転により故障リスクが高い場面でも安定して使用できます。
自吸能力があるポンプ自身で液体を吸い上げる能力を持ちます。液体が入っていない状態からでも起動でき、吸上げ用途に柔軟に対応できます。
固形物・高粘度液・デリケートな流体に対応スラリーや固形物が混入した液体、高粘度の液体も移送できます。シェア感度が高いデリケートな流体でも製品にダメージを与えにくい低せん断特性も備えています。

注意点:脈動と作動音についてAODDポンプは構造上、ダイヤフラムの切り替えによる脈動と作動音が発生します。使用環境によっては音が大きくなることがあり、用途によってはパルスダンパーや消音対策が必要になる場合があります。導入前に設置環境を確認することをおすすめします。

04他のポンプとの違い

ポンプは搬送する液体の性質や使用環境によって最適な種類が異なります。AODDポンプの位置づけを他のポンプと比較して整理します。

比較項目 AODDポンプ 遠心ポンプ ギアポンプ スクリューポンプ
電源不要
空運転対応
自吸能力
固形物混入液対応
高粘度液対応
防爆エリア対応
シールレス構造
大流量・低粘度液の連続搬送

AODDポンプが特に優位性を発揮する場面:防爆エリア・空運転リスクのある現場・固形物や高粘度液の移送で特に力を発揮します。一方、低粘度の液体を大量に連続搬送したい場合は、遠心ポンプが適することもあります。用途に応じた使い分けが重要です。

05こんな現場・用途に向いている

AODDポンプが特に力を発揮する代表的な用途を紹介します。

⚗️
化学・製薬工場
薬液・腐食性液体・危険物の移送。防爆対応とシールレスによる液漏れリスク低減が求められる現場に最適。
🍽️
食品・化粧品工場
低せん断性により製品にダメージを与えず、シェア感度の高いデリケートな原料の移送に適しています。
🎨
塗料・接着剤・樹脂
高粘度材料の搬送に対応。固形物が混入しやすい用途でも詰まりにくく安定した移送が可能です。
💧
水処理・汚泥処理ライン
固形物混入液や汚泥のような難搬送流体にも対応。排水・スラリー処理の現場で広く採用されています。

06ポンプ選定の3つのポイント

適切な選定が長期にわたる安定稼働のカギになります。AODDポンプの導入を検討する際に確認すべき主要なポイントを整理します。

ポイント① 本体(接液部)材質の選択

搬送する液体の化学的性質に合わせて、ポンプ本体の材質を選定します。腐食性が強い液体にはステンレス(SCS14相当)やハステロイC、薬品全般にはPVDFやポリプロピレン、汎用用途にはアルミ合金が選ばれます。

ポイント② ダイヤフラム材質の選択

ダイヤフラムは消耗品ですが、液体・温度・圧力に合った材質を選ぶことで寿命を大幅に延ばせます。

材質 適した用途・特性
PTFE(テフロン) 薬品全般。化学的に不活性でほぼ無浸透
サントプレーン 食品・汎用向け。耐摩耗性に優れ長寿命
ニトリル(NBR) 油脂・溶剤・油圧作動油に耐性
EPDM 酸性液・ケトン・アルコール向け
FKM 各種油脂・芳香族・ハロゲン化炭化水素に耐性

ポイント③ 流量・エア圧の確認

AODDポンプは供給エア圧が高いほど吐出圧が上がり、流量は下がる特性があります(遠心ポンプに近いQ-H特性)。必要な流量と吐出圧を事前に把握し、工場の圧縮空気の供給能力と照合することが重要です。

搬送液体の性質を整理する液体の種類・粘度・固形物の有無・化学的性質を確認します。
使用環境を確認する設置場所の温度・防爆要件・設置スペース・エア供給能力を整理します。
材質を液体の化学特性に合わせる接液部・ダイヤフラム両方の材質を、液体の化学的性質と温度条件に合わせて選定します。

FAQ

Q1電気がなくても使えるのですか?
はい。AODDポンプは工場のコンプレッサーから供給される圧縮空気だけで動作します。電源設備が不要なため、防爆指定エリア・屋外・仮設設備など電気が使えない・使いにくい場所でも稼働できます。ただし、適切な圧縮空気の供給源(エアコンプレッサー)は必要です。
Q2運転中に作動音がするのですが、問題ありますか?
AODDポンプはダイヤフラムが交互に切り替わる構造上、一定の作動音が発生します。これは正常な動作によるものです。ただし、音が急に変わった・極端に大きくなったなど通常と異なる場合は、エア圧の設定やボールバルブの状態、ダイヤフラムの摩耗を確認してください。使用環境によってはパルスダンパーや消音対策が有効な場合があります。
Q3ダイヤフラムの交換頻度はどのくらいですか?
使用する液体の種類・温度・圧力・稼働時間によって大きく異なります。適切な材質のダイヤフラムを選定することで寿命を大幅に延ばすことができます。定期的な点検でピンホール(小さな穴)や亀裂・変形が見られた場合は交換が必要です。液体に合った材質選定が最も効果的なメンテナンスの第一歩です。
Q4高粘度の液体でも問題なく移送できますか?
AODDポンプは高粘度液の移送を得意としていますが、粘度が非常に高い場合はポンプのサイズ・エア圧・配管径の設計に注意が必要です。また固形物が混入している場合は、ポンプの許容固形物径の範囲内であることを事前に確認してください。粘度と固形物サイズに応じた適切なモデル選定についてはお気軽にご相談ください。

※本記事の内容は一般的な技術情報に基づいて作成しています。具体的な数値・仕様は必ず使用する機器のメーカー技術資料・取扱説明書を参照してください。