2026.06.26
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原油が機械を守る油になるまで|潤滑油ができる工程をやさしく解説

潤滑油の原料は、地中から採掘される原油(石油)です。採掘されたばかりの原油はそのままでは機械に使えません。蒸留・精製・脱ろうという複数の工程で余分なものを取り除き、必要な成分だけを残すことで、はじめて機械を守る油になります。最後に添加剤を混ぜ込むことで、エンジン油・油圧油・ギア油などの製品として完成します。
この記事でわかること
- 潤滑油の原料と、原油から油ができるまでの大まかな流れ
- 蒸留・精製・脱ろうなど、各工程で何が行われているか
- 精製方法の違いが潤滑油の性能にどう影響するか
潤滑油の正体は、精製された石油
機械の関節に塗られる潤滑油。その正体は、ガソリンや灯油と同じ原油(石油)から作られています。原油は地中深くに眠っている液体で、炭素と水素が鎖のようにつながった分子が無数に混ざり合ったものです。
ガソリンも灯油も軽油も潤滑油もすべてこの原油を出発点としています。違いは精製の仕方とどの成分を取り出すかです。
採掘したばかりの原油は黒くドロっとした液体で、不純物も多く含まれています。このままでは機械に使えないため、精製工場(製油所)でていねいに処理されます。
原油から潤滑油になるまでの4つのステップ
原油が潤滑油になるまでの道のりを大きく4つのステップに分けて整理しました。それぞれの工程になぜ必要かという理由があります。
原油を加熱すると、分子の大きさによって蒸発する温度(沸点)が異なります。この性質を利用して、ガソリン・灯油・潤滑油の原料など成分ごとに分けます。
蒸留で分けた油には、硫黄や窒素などの不純物がまだ残っています。これらをそのままにすると油が劣化しやすくなるため、水素を使った化学反応などで取り除きます。
精製した油にはワックス(ろう)成分が残っており、寒いと固まってしまいます。このワックスを取り除く工程が脱ろう(デワキシング)です。冬でも機械がスムーズに動くために欠かせません。ここまでの工程を経たものが基油(ベースオイル)と呼ばれ、潤滑油の土台になります。
基油だけでは機械が求めるすべての性能は満たせません。酸化防止・摩耗防止・防錆といった機能を持つ添加剤を混ぜることで、用途に合った潤滑油として完成します。
それぞれの工程で、具体的に何をしているのか
ステップの概要がつかめたところで、工程ごとの中身を少し掘り下げてみましょう。
沸点の違いで成分を仕分ける
料理で水を沸かすと100℃で蒸発しますが、アルコールは約78℃で蒸発します。このように液体によって蒸発する温度は異なります。原油もまったく同じしくみで、加熱すると温度帯によって異なる成分が気体になり、それを冷やして集めることで成分ごとに分けることができます。
大気圧の蒸留でガソリンや灯油を取り出した後、残った重い成分はさらに圧力を下げて蒸留(減圧蒸留)することで、潤滑油の原料となる部分を取り出します。
硫黄・窒素などの劣化の種を除去する
蒸留で分けた油には、硫黄・窒素・芳香族化合物などが含まれています。これらは潤滑油の酸化(劣化)を早めたり、金属を腐食させる原因になります。かつては特殊な溶剤で不要な成分を溶かし出す溶剤精製が主流でしたが、現在は水素を使って化学的に除去する水素化精製(ハイドロクラッキング)が広く使われています。水素化精製は精度が高く、安定した品質の基油を作ることができます。

冬に固まらない油をつくる
精製を終えた油にはまだワックス(ろう)と呼ばれる成分が残っています。ワックスは常温では問題ありませんが、温度が下がると固まる性質があります。冬の早朝や寒冷地での始動時に油が固まってしまうと、機械に油が行き渡るまでの時間に金属部品が摩耗してしまいます。脱ろう処理はこのワックスを除去し、低温でも流れやすい油にするための工程です。
このステップまでを経た油を基油(ベースオイル)と呼びます。潤滑油製品の土台となる成分です。
精製を深めるほど、油の品質は上がる
基油は精製の深さによって品質のグループが分けられています。業界では米国石油協会(API)が定めた5つのグループ分類が広く使われており、数字が大きくなるほど精製度が高く、不純物の少ない高品質な油になります。
最も基本的な精製方法。コストが抑えられ、一般的な工業用潤滑油に広く使われる。
水素で不純物を除去。安定性が高く、現在の工場用潤滑油(エンジン油・油圧油など)の主流。
さらに深く精製。低温でも流れやすく酸化にも強い。省燃費エンジン油や長寿命用途に使われる。
化学的に合成した基油(ポリアルファオレフィン)。均一な性能で、高温・低温・長寿命が必要な用途向け。
エステル類など特殊な基油。食品機械向け・航空用など特定の環境・用途に対応する。
グループの数字が大きい=必ずしもいい油ではありません。大切なのは使う機械の仕様に合っているかどうかです。メーカーが指定する規格・粘度グレードに従って選ぶのが基本です。
添加剤が油に「機能」を与える
基油だけでは、実際の機械が必要とするすべての性能を満たすことはできません。そこで配合されるのが添加剤(アディティブ)です。少量でも油の性質を大きく変える、いわば調味料のような存在です。
添加剤の種類と配合によって、同じ基油からまったく異なる用途の潤滑油製品が生まれます。エンジン油・油圧油・ギア油の違いは、この添加剤の配合の差によるところが大きいといえます。
熱や空気と反応して油が劣化(酸化)するのを遅らせる。油の使用寿命を延ばす基本的な添加剤
金属面に薄い保護膜を作り、金属同士が直接こすれることで起きる摩耗を防ぐ
水分や酸による金属の錆・腐食を防ぐ。油圧機器や工作機械用の油に多く配合される
温度が変わっても粘度(油の硬さ)が変化しにくい性質を高める。寒暖差が大きい環境で重要

よくある質問
鉱油系と合成油は何が違うの?
鉱油系は原油を精製してつくった油(グループⅠ〜Ⅲ)で、コストが抑えられ広く使われています。合成油(グループⅣ・Ⅴ)は、原油由来の成分を化学的に組み立て直したもので、酸化への強さ・低温での流れやすさ・長寿命に優れます。その分価格は高くなる傾向があります。どちらを選ぶかは機械メーカーの推奨仕様に従うのが基本です。
潤滑油の種類がたくさんあって、何が違うのかわかりません
エンジン油・油圧油・ギア油・コンプレッサー油といった違いは、主に添加剤の配合と粘度グレードの差です。それぞれの機械が求める条件(圧力・温度・回転数・素材との相性)に合わせて設計されています。基本的には使う機械の取扱説明書またはメーカー指定を優先してください。異なる種類の油を混ぜて使うのは、添加剤が反応して性能が落ちるリスクがあるため避けるのが原則です。
グループが高い油を使えば機械は長持ちするの?
必ずしもそうではありません。大切なのは機械の仕様に合った油を使うことです。グループⅡで十分な性能が得られる機械にグループⅣの高級合成油を使っても、性能が上がるとは限りません。逆に、機械が指定している規格より低いグレードの油を使うと部品の摩耗が早まるリスクがあります。まずはメーカーの指定する粘度グレードと規格を確認することが最優先です。
添加剤入りの油と入っていない油はどう見分ける?
市販されている潤滑油製品のほぼすべてに何らかの添加剤が配合されています。添加剤の種類や量は製品の規格・性能グレードとして製品カタログや安全データシート(SDS)に記載されています。「無添加」と明記された基油(ベースオイル)製品も存在しますが、それは特定の用途向けです。一般的な設備保全の現場では、用途に応じた添加剤入りの完成品を使うのが基本です。