2026.08.21

  • 原因と対策
  • 潤滑

自動給油器を設置したのに潤滑できていない?グリースが届かない7つの原因と対策

自動給油器からグリースが吐出しない

自動給油器を取り付けても給脂箇所までグリースが届かないケースは、ニップルの詰まりや配管の抵抗、異なるグリースの混合、背圧の上昇による機器側の不具合など複数の原因が組み合わさって起きることが一般的です。原因を切り分けて対処することが改善への近道です。

この記事でわかること

  • 自動給油器を設置してもグリースが届かない主な原因
  • 末端の注油口から給油器本体へ、順番に原因を切り分ける調査手順
  • 改善につながりやすい対策のポイント

自動給油器を付けても潤滑できないのはなぜか

グリースが届かない原因は、給油器そのものよりも設備側や配管側に潜んでいることが多いとされています。自動給油器は設定した量・周期でグリースを送り出す装置ですが、送り出したグリースが給脂箇所まで確実に到達するかどうかは、ニップルや配管の状態に大きく左右されます。給油器を設置したのに異音や発熱が改善しない場合、まずグリースが本当に届いているかを疑うことが出発点になります。

原因は大きく分けると、①給脂経路(ニップル・配管)に関するもの、②グリースの選定・混合に関するもの、③給油器本体に関するもの、の3系統に整理できます。以下で順に見ていきます。

給脂経路の詰まりが引き起こす原因

ニップルや配管内部の詰まりは、グリースが届かない原因として比較的多く見られるとされており、まず疑うべきポイントといえます。

原因1:ニップル(給脂口)の詰まり

給脂口に古いグリースが固着していたり、粉じん・異物が付着していると、新しいグリースが押し出されなくなります。特に屋外設備や粉じんの多い環境では、ニップル周りの汚れが蓄積しやすいと言われています。

原因2:配管内部の詰まり

配管が長い、経路が複雑な場合、内部にグリースが固着して流路が狭くなることがあります。低温環境や硬めのグリースでは、配管内の流動抵抗が大きくなりやすいとされています。

原因3:配管の破損・接続不良

配管の亀裂や継手部分の緩みがあるとグリースは給脂箇所に届く前に漏れ出てしまいます。見た目では気づきにくいため、定期的な目視点検が有効とされています。

配管・ニップルの点検の様子

グリースの選定・混合に関する原因

指定と異なるグリースの使用や、異なる増ちょう剤のグリースが混ざることも、給脂不良の原因になり得るとされています。

原因4:指定外グリースの使用・異種グリースの混合
グリースは増ちょう剤という成分によって半固体の状態を保っていますが、増ちょう剤の種類が異なるグリース同士が混ざると、軟化や硬化、耐熱性の低下など、性能が不安定になることがあるとされています。設備指定と異なる銘柄への切り替え時や補充時に、古いグリースが十分に除去されないまま新しいグリースを追加すると、この混合が起こりやすくなります。

原因5:使用環境に対してグリースの硬さ(ちょう度)が合っていない
低温環境でちょう度の高い(硬い)グリースを使用すると流動性が不足し、給油器のポンプが押し出しにくくなる場合があります。反対に高温環境では、グリースが軟化・離油しやすくなり、給脂周期の設定によっては劣化が早まる可能性があるとされています。使用環境に適したグリースの選定は、メーカーの仕様に従うことが基本です。

グリースニップルの確認

給油器本体に起因する原因

給脂経路に抵抗がある状態のまま給油器を稼働させ続けると、給油器本体にも負荷がかかり、故障につながることがあるとされています。

原因6:背圧の上昇によるポンプ部品への負荷
ニップルや配管が詰まっている状態で給油器を作動させ続けると、行き場を失ったグリースの圧力(背圧)が高くなります。この状態が続くと、給油器内部のポンプやピストンなど可動部品に負荷がかかり、破損につながる可能性があるとされています。給油器によっては、過大な圧力から保護するために、本体の一部が壊れる安全構造を備えている製品もあります。

原因7:給油器の設定・供給量が給脂箇所に対して合っていない
給脂周期や1回あたりの吐出量が、実際の給脂箇所の容量や消費ペースと合っていないケースもあります。供給量が少なすぎれば潤滑不足になり、多すぎれば行き場のないグリースが漏出したり圧力上昇の原因になったりすることがあります。設置時に、給脂箇所の仕様に応じた設定になっているかを確認することが重要です。

パルサールブ設置の様子

末端から給油器へ、原因を切り分ける調査の順番

グリースが届かない場合は、いきなり自動給油器本体を疑うのではなく、グリースが実際に出る「末端(設備側の注油口)」から給油器に向かって、抵抗を一つずつ取り除きながら逆にたどっていく進め方が基本になります。配管内の詰まりは、末端側の抵抗が残ったままだと繰り返し発生しやすいため、まず末端側の抵抗をなくすことが重要とされています。以下のチェックリストの順に沿って確認します。

手順 確認箇所 作業内容 チェック
STEP1 設備側の注油口
(ニップル)
グリースガンでニップルに直接給脂し、末端の詰まりを取り除く。抵抗が強く押し込めない場合は、ニップル自体の詰まり・破損、ベアリング内部でのグリースの固化を確認する
STEP2 潤滑ライン
(配管)
末端の抵抗が解消したことを確認したうえで、グリースガンで配管内に給脂し、配管内の詰まりを押し出す。末端側の抵抗が残っていると配管内の詰まりが再発しやすいため、STEP1を先に完了させることが前提
STEP3 分配弁
(ある場合)
分配弁が設置されている場合は、弁にグリースニップルを取り付け、グリースガンで各分岐先へ正常に排出されるか確認する。分岐ごとに排出量や抵抗にばらつきがないかも確認する
STEP4 自動給油器本体 STEP1〜3で末端側に問題がないことを確認したうえで、給油器本体のエア噛み(気泡混入)の有無、ポンプ部品の破損・動作不良の有無を確認する
自動給油器

STEP1〜3で末端側の抵抗を解消しても症状が改善しない場合は、給油器本体側(エア噛み・ポンプ故障)に原因がある可能性が高いと考えられます。分解や部品交換を伴う判断は、自己判断で進めず、メーカーや専門業者に相談することをおすすめします。

また、吐出不良は設置後の点検だけでなく、設置環境や使用条件(配管の長さ・経路、周囲温度、給脂箇所の数や仕様など)に起因して起こることも多いとされています。設置条件によって適切な給油器の仕様や配管設計は異なるため、導入・設置の段階から知識のあるプロと相談しながら進めることが、吐出不良を未然に防ぐうえで望ましいといえます。

給脂トラブルでお困りの方へ

自動給油器の吐出不良や設置環境に合わせた機種選定など、技術的なご相談を承っています。

よくある質問

自動給油器から気泡やグリースが出ているのに、給脂箇所まで届いていないのはなぜですか?

給油器からグリースが出ていても、配管やニップルの詰まりによって給脂箇所の手前で滞留している可能性があります。給油器本体だけでなく、配管全体の状態を確認することをおすすめします。

グリースを補充する際、前のグリースが残っていても問題ありませんか?

増ちょう剤の種類が異なるグリースが混ざると、性能が不安定になる場合があるとされています。銘柄を変更する際は、可能な範囲で古いグリースを除去してから補充することが望ましいとされています。詳しくはメーカーの指示に従ってください。

分配弁がない設備でも、末端からの点検は可能ですか?

分配弁がない設備でも、末端の注油口から配管に向かって順に確認する進め方は可能です。分配弁がない場合はSTEP3を省略し、末端(STEP1・2)の確認後、給油器本体(STEP4)に進む流れで問題ないとされています。

新しく自動給油器を設置する際、何を基準に機種や配管を選べばよいですか?

給脂箇所の数、配管の長さや経路、周囲温度、必要な吐出量などによって適した機種や配管仕様は異なります。設置環境や使用条件を踏まえた選定が必要になるため、導入時点で知識のあるプロに相談することをおすすめします。