2026.10.01

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  • 産業用ポンプ

キャビテーションとは?ポンプで気泡が発生する仕組みと原因

キャビテーションとは

キャビテーションとは、液体の圧力がその温度での飽和蒸気圧を下回ったときに液体が気化して気泡が生まれ、圧力の高い場所で一気に潰れる現象です。ポンプでは羽根車の入口付近で起きやすく、騒音や振動、性能の低下、部品の損傷につながります。

この記事でわかること

  • キャビテーションの意味と沸騰との違い
  • ポンプの中で気泡が生まれて潰れるまでの流れ
  • 起きやすくなる条件とNPSHによる判断の考え方

キャビテーションとは何か

キャビテーションは液体の流れの中で圧力が局所的に下がり、液体が気化して気泡が生じる現象です。英語のcavity(空洞)が語源とされ、ポンプのほかにも弁や船のスクリューなど液体が速く流れる場所で起こります。

理解の鍵になるのが飽和蒸気圧です。水は大気圧のもとでは100℃で沸騰しますが、圧力が十分に低ければ常温でも気化します。沸騰は温度を上げて気化の境目を越える現象で、キャビテーションは圧力を下げて同じ境目を越える現象だと考えるとわかりやすくなります。

飽和蒸気圧

液体が気化し始める境目の圧力。液体の種類と温度によって決まり、温度が高いほど大きくなる

羽根車(インペラ)

ポンプの中で回転し、液体に勢いを与えて送り出す羽根のついた部品

沸騰

変わるもの温度が上がる(圧力はほぼ一定)

起きること飽和蒸気圧が周囲の圧力に届き、液体が気化する

キャビテーション

変わるもの圧力が下がる(温度はほぼ一定)

起きること周囲の圧力が飽和蒸気圧を下回り、液体が気化する

ポンプの中で気泡が生まれて潰れるまで

遠心ポンプ(羽根車の回転で液体を外側へ送り出すポンプ)では、液体は吸込口から羽根車の中心付近に入り、羽根で加速されて外周へ送り出されます。羽根車の入口付近は流速が速く、ポンプの中で圧力が最も低くなりやすい場所です。ここで圧力が飽和蒸気圧を下回ると気泡が発生します。

発生した気泡は流れに乗って外周側へ運ばれます。外周に向かうほど圧力が高くなるため気泡は形を保てず、ごく短い時間で潰れます。このとき周囲の液体が気泡のあった空間へ一気に流れ込み、局所的に強い衝撃が生じます。キャビテーションによる害の多くは、この気泡が潰れる瞬間に生まれます。

ポンプ内部の圧力変化のイメージ

飽和蒸気圧
 
 
 
気泡が発生
 
気泡が潰れる
 
 
吸込水槽吸込配管ポンプ吸込口羽根車入口羽根車出口吐出配管

ポンプが液面より高い位置にある吸上げ運転を想定した説明用のイメージです。棒の高さは実際の圧力値を示すものではありません。

  1. 1圧力が下がる羽根車入口で流速が上がり、圧力が低下する
  2. 2気泡が発生する飽和蒸気圧を下回った部分の液体が気化する
  3. 3気泡が運ばれる流れに乗って圧力の高い外周側へ移動する
  4. 4気泡が潰れる圧力の回復で気泡が崩壊し、衝撃が生じる
キャビテーションを描く遠心ポンプ断面

液温が高いほど起きやすくなる理由

飽和蒸気圧は液温が上がるほど大きくなります。水の場合は20℃で約2.3kPaですが、80℃では約47.4kPaとおよそ20倍になります。飽和蒸気圧が高いということは、わずかな圧力の低下でも気化の境目に届いてしまうということです。

そのため同じポンプと同じ配管でも、温水や高温の液体を扱う場合はキャビテーションが起きやすくなります。また水以外の液体は種類によって飽和蒸気圧が異なるため、扱う液体の性質と温度をあわせて確認することが大切です。

水の温度と飽和蒸気圧

20℃
 
約2.3 kPa
40℃
 
約7.4 kPa
60℃
 
約19.9 kPa
80℃
 
約47.4 kPa
100℃
 
約101.3 kPa

100℃での値は標準大気圧(約101.3kPa)とほぼ等しく、大気圧下で水が100℃で沸騰することと対応しています。数値は飽和水の蒸気表をもとにした概数です。

キャビテーションが起きると現場で何が起きるか

現場で最初に気づきやすいのは音と振動です。キャビテーションの音は、砂利や小石がポンプの中を流れているような音と表現されることがよくあります。気泡が潰れるたびに衝撃が生じるため振動も大きくなりやすく、軸受やメカニカルシール(回転軸から液体が漏れるのを防ぐ部品)にも負担がかかるとされています。

気泡が流路をふさぐと吐出量や揚程(ポンプが液体を押し上げられる高さ)が下がります。さらに同じ場所で衝撃が繰り返されると、羽根車の表面が虫食い状に削られていきます。これを壊食(エロージョン)と呼び、進行すると羽根車の交換が必要になることもあります。

 騒音砂利が流れるような音が続く
 振動軸受やシールへの負担が増える
 性能低下吐出量や揚程が下がる
 壊食羽根車の表面が虫食い状に削られる
キャビテーションで腐食

異音や振動がキャビテーションによるものか、空気の吸込みなど別の原因によるものかは、運転条件や配管の状態を見ないと判断が難しいことがあります。液体の種類や温度、ポンプの設置状況をお知らせいただければ、原因の切り分けをお手伝いします。

起きるかどうかを判断するNPSHの考え方

キャビテーションが起きるかどうかは、NPSH(Net Positive Suction Head)という指標で判断します。NPSHはポンプの吸込側で液体の圧力が飽和蒸気圧に対してどれだけ余裕を持っているかを、液柱の高さ(m)に換算して表したものです。比べるのはNPSHaとNPSHrの2つです。

NPSHa(有効吸込ヘッド)は設置条件で決まる余裕で、NPSHr(必要NPSH)はポンプがキャビテーションによる性能低下を避けるために必要とする値です。NPSHaがNPSHrを上回るように計画するのが基本です。なおNPSHrは一般的に全揚程が3%低下するときの値(NPSH3)で示されるため、その時点ですでに気泡は発生しています。実際の計画ではメーカーが推奨する余裕を持たせることが大切です。

NPSHaを決める要素(吸上げ運転の場合)

液面にかかる圧力− 飽和蒸気圧− 吸上げ高さ− 吸込配管の損失= NPSHa

各要素は液柱の高さ(m)に換算して計算します。液面がポンプより高い押込み運転では、その高さの分だけNPSHaが大きくなります。

  NPSHa(有効吸込ヘッド) NPSHr(必要NPSH)
意味 設置側が用意できる余裕 ポンプが必要とする余裕
決めるもの 液面の圧力、液温、設置高さ、吸込配管 羽根車入口の設計と運転流量
値の見方 大きいほど有利 小さいほど吸込性能が良い

キャビテーションを招きやすい条件

NPSHaが下がるかNPSHrが上がると、両者の差が縮まってキャビテーションが起きやすくなります。現場でよく見られる条件を整理すると次のとおりです。

条件 影響 確認したいこと
吸込液面が低い、吸上げ高さが大きい NPSHa低下 水槽の液面とポンプの設置高さ
吸込配管が細い、長い、曲がりが多い NPSHa低下 吸込配管の口径とルート
ストレーナ(異物を取り除く網)の目詰まり NPSHa低下 ストレーナの清掃状況
吸込側の弁を絞っている NPSHa低下 吸込側の弁の開度
液温が高い NPSHa低下 液温と季節や工程による変化
定格より多い流量で運転している NPSHr上昇 実際の運転点と性能曲線

実際の原因や対策は設備の条件によって異なります。まずは上の項目を順に確認して現状を把握することが、原因を絞り込む出発点になります。

ポンプ吸込配管とストレーナ

吸込条件の見直しやポンプの入れ替えを検討する段階では、液体の種類と温度、必要な流量、液面とポンプの高さ関係がわかると話が早く進みます。現在の使用条件をお知らせいただければ、条件に合ったポンプの検討をお手伝いします。

よくある質問

キャビテーションとエア噛み(空気の吸込み)は同じですか?

異なる現象です。キャビテーションは圧力の低下によって液体そのものが気化して気泡ができる現象で、エア噛みは配管の継手の緩みや水槽の液面の渦などから外部の空気が吸い込まれる現象です。どちらも音や振動、性能低下として現れるため見分けにくいことがありますが、原因が違うため対処の方向も変わります。

キャビテーションはポンプ以外でも起きますか?

起きます。液体が速く流れて局所的に圧力が下がる場所であれば発生する可能性があり、弁(バルブ)の絞り部や船のスクリュープロペラなどでもよく知られています。いずれも圧力が飽和蒸気圧を下回るという同じ仕組みで起こります。

異音が止まればキャビテーションの心配はなくなりますか?

一概には言えません。液面や液温、流量が変わると再び発生することがあり、音が出ていた期間に羽根車の壊食が進んでいた可能性もあります。発生していた時期の運転条件を記録しておき、分解点検の際には羽根車の表面を確認しておくと安心です。

NPSHaがNPSHrをわずかでも上回っていれば問題ありませんか?

一般的には余裕を持たせることが推奨されています。NPSHrは全揚程が3%低下するときの値として示されることが多く、その状態ではすでにキャビテーションが発生しているためです。必要な余裕の大きさは用途や扱う液体、ポンプの種類によって異なるため、メーカーの推奨値を確認してください。