2026.10.07

  • 原因と対策
  • 産業用ポンプ

加圧浮上汚泥の移送でポンプが故障する原因とは?|気泡・粘りけ・固形物から考えるポンプ選び

加圧浮上汚泥の移送でポンプが故障する原因とは?

加圧浮上汚泥(浮上スカム)は微細な気泡や油脂と固形物を含むため、ポンプにとって扱いにくい液体です。故障の多くは気泡で液が途切れて起きる空運転や渦巻ポンプの吐出量低下、詰まりが原因です。汚泥の性質に合ったポンプを選ぶことで故障の繰り返しを防げます。

この記事でわかること

  • 加圧浮上汚泥がポンプにとって扱いにくい理由
  • ポンプの形式別に起きやすい故障の原因
  • 気泡を含む汚泥の移送に合うポンプの考え方

移送ポンプの故障がすでに続いている場合は、記事を読み進める前にご相談いただくこともできます。汚泥の状態と現在のポンプの型式をお知らせいただければ原因の切り分けをお手伝いします。

加圧浮上汚泥とはどんな汚泥か

加圧浮上とは加圧して空気を溶かし込んだ水を排水に注入し、大気圧に戻ったときに発生する微細な気泡で汚れを浮かせて取り除く排水処理の方法です。気泡が浮遊物質(SS:水中に浮いている細かな固形物)に付着して水面に浮き上がり、表面に集まった浮上物はスカムと呼ばれます。スカムは掻き寄せ装置でスカム槽へ回収され、その後脱水機で水分を分けて処分されます。

食品工場や食肉加工場をはじめ化学工場や製紙工場でも広く使われており、乳化した油分も含めて除去できる点が特徴です。この記事ではスカム槽から脱水機などへ送る汚泥を加圧浮上汚泥と呼びます。

加圧浮上処理の流れと移送ポンプの位置

  1. 原水工場排水
  2. 凝集槽凝集剤で汚れをまとめる
  3. 浮上槽微細な気泡で浮かせる
  4. スカム槽浮上物をためる
  5. 移送ポンプ故障が起きやすい箇所
  6. 脱水機水分を分けて処分
汚泥を押し集める浄化槽スクレーパー

加圧浮上汚泥がポンプにとって扱いにくい理由

加圧浮上汚泥は気泡の浮力で集めた汚泥であるため、内部に細かな気泡を多く抱えています。さらに油脂やフロック(凝集剤で固まった汚れの粒)を含み、粘りけのある状態になっています。気泡の量や粘りけは排水の性状や運転条件によって変わり一定ではありません。

ポンプから見ると液体と空気が不規則に入ってくること、粘りけがあって吸い込みにくいこと、固形物が引っかかりやすいことの三つの負担が同時にかかる液体です。どの負担が故障につながりやすいかはポンプの形式によって異なります。

汚泥の性質 ポンプ内で起きやすいこと 影響が出やすいポンプ
気泡・空隙 液が途切れて空運転になる/空気がたまって送れなくなる 一軸ねじポンプ
渦巻ポンプ
粘りけ 吸い込みが追いつかず液切れが起きる 一軸ねじポンプ
渦巻ポンプ
油脂・固形物 弁や流路に引っかかる・詰まる 形式を問わず注意が必要

気泡による空運転で一軸ねじポンプが傷む

一軸ねじポンプ(金属のねじ状ロータがゴム製のステータの中で回転して液を送るポンプ)は粘りけや固形物のある液に向くため、汚泥の移送によく使われます。ただしステータは送る液によって潤滑と冷却がされており、液がない状態で回る空運転では摩擦熱でゴムが傷みます。空運転は一軸ねじポンプの故障原因として最も多いものとされ、短時間でも損傷につながることがあります。

加圧浮上汚泥では気泡やすき間がポンプに入り込むため、運転者が意図しないまま部分的な空運転が起きやすくなります。その結果ステータやロータだけでなくメカニカルシール(回転軸からの液漏れを防ぐ部品)も傷みやすくなります。整備時には軸芯合わせやシールの組付けと軸受の給脂といった手間もかかり、保全の負担が大きくなりがちです。

進行容積ポンプの摩擦熱

ステータ交換を短い周期で繰り返している場合は、部品の品質よりも汚泥の性質とポンプ形式の組み合わせに原因がある可能性があります。

空気がたまって渦巻ポンプが送れなくなる

渦巻ポンプ(羽根車の回転で液に勢いをつけて送るポンプ)は液に空気が混ざると性能が大きく落ちます。羽根車の中心付近は圧力が低いため、気泡がそこに集まって液の流れを妨げるからです。空気が多くなるとポンプが回っていても液を送れない状態(エアロック)に陥ることもあります。

わずかな空気でも影響は大きく、一例として空気が2%混ざると吐出量は約10%低下し、4%では約43.5%低下するとされています。加えて振動や騒音が増え、軸の折損など機械的なトラブルを招く原因にもなります。

空気の混入量と渦巻ポンプの吐出量

空気が混ざっていない状態を100とした場合の一例

空気なし
 
100
空気 2%
 
約90
空気 4%
 
約56.5

数値はポンプの型式や運転条件によって異なります。

青い液体と気泡の遠心ポンプ断面

粘りけと液位の変動で吸い込みが不安定になる

スカム槽の汚泥は粘りけがあるうえ、スカムの発生量に合わせて液位が上下します。ポンプが汚泥を吸い上げる高さ(吸込み揚程)が大きい配置や液位が下がった状態での運転では吸い込みが追いつかず、液切れが起こりやすくなります。スカムを移送する一軸ねじポンプの損傷例でも粘りけと吸込み揚程のためにステータ内へ液が十分に入らず、空運転となってステータが傷んだことが報告されています。

また油脂が冷えて固まったりフロックや異物が弁や流路にたまったりすると、詰まりや吐出量の低下につながります。気泡と粘りけと液位の変動が重なるため、加圧浮上汚泥の移送では故障が複合的に起きやすいといえます。

ステータ交換や詰まりが繰り返し起きている場合は、汚泥の状態と現在のポンプの使い方をお聞かせください。故障原因の切り分けと、移送条件に合うポンプ形式の検討をお手伝いします。

加圧浮上汚泥の移送に合うポンプの考え方

気泡を含む汚泥を安定して送るには空運転に強く、粘りけや固形物のある液を通しやすいポンプを選ぶことが基本です。この条件に合いやすいのがエア駆動式ダイヤフラムポンプ(圧縮空気で膜を往復させて液を送るポンプ)です。回転する部品やメカニカルシールを持たない構造のため、空運転をしても破損しにくいのが特徴です。

一方で吐出に脈動があることや圧縮空気を消費すること、ダイヤフラムが定期交換部品であることは考慮が必要です。既設の一軸ねじポンプを使い続ける場合は、空運転を検知して停止させる保護装置の設置やスカム槽の液位管理を見直すことが有効とされています。

  渦巻ポンプ 一軸ねじポンプ エア駆動式ダイヤフラムポンプ
(フラップバルブ型)
気泡の混入 吐出量が落ちやすい 空運転につながりやすい 送液を続けやすい
空運転 避ける必要がある 短時間でも損傷の恐れ 可能
粘りけのある液 不向き 得意 対応しやすい
固形物 形式による 対応しやすい 通過しやすい
主な注意点 空気だまり対策 空運転保護が必須 脈動・圧縮空気の消費
気泡を含む汚泥の移送に サンドパイパー ヘビーデューティ・フラップバルブモデル フラップバルブ

サンドパイパーのヘビーデューティ・フラップバルブモデルは逆止弁に板状のフラップ弁を使っており、固形物や粘りけのある液が通りやすい構造です。海外の工場では加圧浮上汚泥の移送に使っていた一軸ねじポンプをこのモデルに置き換えた事例があります。気泡の混入を制御できない条件でも空運転で傷まない点が採用の決め手となり、設置面積の小ささや据付けと保守のしやすさも評価されています。

現在の移送条件でエア駆動式ダイヤフラムポンプに置き換えられるか判断に迷う場合は、汚泥の状態や配管条件をお知らせください。サイズや材質の選定から既設ポンプとの置き換え方法まで一緒に検討します。

よくある質問

加圧浮上汚泥の移送に渦巻ポンプは使えませんか?

気泡が少なく水分の多い状態であれば使われることもあります。ただし空気が混ざると吐出量が大きく落ちやすく、エアロックで送れなくなることもあるため、気泡を多く含む汚泥には一般的に不向きです。汚泥の状態に応じた判断が必要です。

一軸ねじポンプのステータが短期間で傷むのはなぜですか?

多くの場合は空運転が原因と考えられます。加圧浮上汚泥では気泡やスカム槽の液位低下で液が途切れやすく、潤滑と冷却を失ったステータが摩擦熱で傷みます。保護装置の有無や吸込み側の条件を確認することをおすすめします。

エア駆動式ダイヤフラムポンプは空運転しても問題ありませんか?

構造上は空運転をしても破損しにくいとされています。ただし液がない状態で速い動作を続けるとダイヤフラムなどの消耗が進むため、長時間の空運転は避け、メーカーの仕様に従って供給エア圧を調整して使うことが基本です。