2026.07.10

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産業用ポンプの詰まり・摩耗という課題をどう防ぐか|固形物・スラリー移送の改善策

スラリー液の移送

スラリーや固形物を含む液体を安定して移送するには、詰まりや摩耗が起きやすいという特性を理解したうえで、ポンプの構造選定と運転・保全の工夫を組み合わせることが欠かせません。液体だけを想定した通常のポンプでは早期の故障につながりやすく、用途に合った機種選定と日常の管理が、稼働の安定とコスト削減の両方を左右します。

この記事でわかること

  • 固形物・スラリー移送で通常のポンプが抱える課題
  • 用途に応じたポンプの種類と選び方の着眼点
  • 詰まり・摩耗を防ぐための運転と保全の工夫

スラリー・固形物移送とはどういうことか

スラリーとは、水や油などの液体に土砂・鉱物・汚泥・粉体といった固形分が混ざり合った状態の流体を指します。工場やプラントでは原料や排水、汚泥処理など、さまざまな場面でこうした固形物混じりの液体を扱う必要があります。

一見すると液体を送るという点では通常のポンプ移送と同じに思えますが、固形分がポンプ内部を通過する際に配管や羽根車(インペラー)と接触するため、単純に液体を送るのとは異なる負荷がかかります。この違いを理解しないまま一般的なポンプを選んでしまうと、思わぬトラブルにつながることがあります。

スラリー

液体に固形分が混ざり合った流体。濃度や粒径は用途によって幅がある

羽根車(インペラー)

ポンプ内部で回転し、液体に圧力とエネルギーを与えて送り出す部品

スラリー液

なぜ通常のポンプでは対応が難しいのか

一般的な液体移送用のポンプは、羽根車や配管の隙間が比較的狭く作られています。きれいな液体を送る分には問題になりませんが、固形物が混ざると事情が変わります。

固形分が羽根車やケーシングの内壁に当たり続けることで表面が削られていく摩耗、粒子が隙間に挟まって動きを妨げる閉塞(詰まり)、そして繊維状の異物が羽根車に絡みつく巻き付きなど通常のポンプでは想定していないトラブルが起こりやすくなります。これらは徐々に進行するため、初期段階では気づきにくいという厄介さもあります。

摩耗
閉塞(詰まり)
巻き付き

摩耗や詰まりは、性能低下という形でじわじわと現れることが多く、吐出量の低下や振動・異音として顕在化したときには、内部の損傷がかなり進んでいるケースも少なくありません。

固形物との接触で摩耗した羽根車

固形物移送に対応するポンプの種類と仕組み

固形物やスラリーを扱う現場では、通過できる粒子の大きさや耐摩耗性を考慮して設計されたポンプが使われます。代表的な考え方をいくつか紹介します。

一つは羽根車の形状を工夫し、流路を広く取ることで固形物が通過しやすいように設計されたタイプです。もう一つは摩耗しやすい部分に硬度の高い素材やゴムライニングを採用し、削れによる寿命低下を抑える考え方です。こうした遠心式のポンプは、比較的粒径が細かく濃度も低めのスラリーで多く使われています。

一方、粒径が大きい、濃度が高い、あるいは流体の性質が変わりやすいといった条件になるほど、羽根車が固形分に直接さらされる遠心式では負荷が大きくなりがちです。こうした場面で候補に挙がるのが、ダイヤフラム(隔膜)の往復運動によって液体を押し出す容積式のダイヤフラムポンプです。羽根車のように高速回転する部品が流路内にないため、固形分との接触による摩耗が構造的に起こりにくいという特徴があります。動力源には圧縮空気を使うエア駆動式(AODDポンプ)と、モーターを使う電動式があり、設置環境や求める性能に応じて選ばれています。

  一般的な遠心ポンプ ダイヤフラムポンプ
駆動方式 モーターで羽根車を高速回転 圧縮空気またはモーターでダイヤフラムを往復動
固形分との接触 羽根車が直接さらされやすい 可動部が少なく接触が起こりにくい
空運転・自吸 空運転に弱い機種が多い 自吸性があり空運転にも比較的強い
得意な条件 粒径が細かく濃度が低めの流体 粒径が大きい、濃度が高いなど過酷な流体

処理性能の傾向イメージ

耐摩耗性
遠心式
 
ダイヤフラム
 
空運転耐性
遠心式
 
ダイヤフラム
 
自吸性
遠心式
 
ダイヤフラム
 
高濃度・大粒径への適性
遠心式
 
ダイヤフラム
 

※上表の内容を視覚化した概念図です。実際の性能は機種・仕様・運転条件によって異なります。

配管に接続されたダイヤフラムポンプ
固形物・スラリー移送で選ばれる理由 ダイヤフラムポンプという選択肢 ダイヤフラムポンプの構造

ダイヤフラムポンプは、ダイヤフラムの往復運動で液体を押し出す構造上、羽根車のような高速回転部品が流路内になく、固形分による摩耗の影響を受けにくいことが特長です。空運転になっても壊れにくく、自吸性能を備えているため、液面が変動しやすい現場や間欠的な運転が必要な場面でも扱いやすいポンプとして選ばれています。圧縮空気を動力源とするエア駆動式(AODDポンプ)は配線が不要で防爆対応がしやすく、粉じんや可燃性物質を扱う現場で評価されています。一方、モーターを動力源とする電動式はエア源が確保しにくい現場でも導入しやすく、消費エネルギーを把握しやすいという利点があります。

選定で失敗しないための着眼点

固形物・スラリー対応のポンプを選ぶ際は、単純に固形物対応と書かれている機種を選べばよいというわけではありません。まず整理したいのは、送りたい流体に含まれる固形分の粒径・濃度・硬さです。粒径が大きい、あるいは濃度が高いスラリーほど羽根車が固形分にさらされにくいダイヤフラムポンプのような容積式の方式が合いやすくなります。

あわせて揚程(液体を押し上げる高さ)や流量といった通常の選定条件、そして固形物によって摩耗しやすい部品を交換しやすい構造になっているかどうかも確認しておきたいポイントです。ダイヤフラムポンプはダイヤフラムやボールバルブといった消耗部品の交換が比較的簡易な機種が多く、導入後の保守性という観点でも選ばれやすい理由になっています。また、圧縮空気の設備がすでにある現場ではエア駆動式、エア源の確保が難しい現場や消費エネルギーを管理したい現場では電動式というように、動力源の選択も判断材料のひとつになります。判断に迷う場合は、扱う流体のサンプルや現場条件をもとにメーカーや商社に相談しながら機種を絞り込んでいくのが現実的です。

複数のポンプの比較

詰まり・摩耗を防ぐ運転と保全の工夫

適切な機種を選定できても運転の仕方次第で寿命や安定性は変わってきます。固形分が沈殿しやすい流体の場合、運転を停止している間に配管内で固形分が沈降し、再起動時の閉塞につながることがあります。停止・起動の手順や配管内の洗浄方法をあらかじめ決めておくことがトラブルの予防につながります。

また、摩耗は徐々に進行する性質があるため、吐出量や振動、異音といった変化を定期的に確認し、異常の兆候を早期に捉える体制も重要です。この点でもダイヤフラムポンプのように空運転や間欠運転への耐性を備えた機種は、運転条件が変動しやすい現場での安定稼働に寄与しやすいといえます。摩耗しやすい部品については、あらかじめ交換の目安を決めておくことで、突発的な停止を避けやすくなります。一般的には、稼働状況に応じた点検周期を設定し、記録を残しながら傾向を把握していく方法が有効とされています。

ポンプの点検

よくある質問

スラリーポンプと通常のポンプ、見た目で判断できますか?

外観だけで判断するのは難しい場合があります。流路の広さや内部素材、ライニングの有無など、内部構造の違いが性能に大きく関わるため、カタログの仕様や取扱説明書で確認することをおすすめします。

固形物対応ポンプであれば、どんな粒径のスラリーでも問題なく送れますか?

一概には言えません。対応できる粒径や濃度には機種ごとに幅があり、条件によっては専用設計が必要になる場合もあります。扱う流体の性状を踏まえて選定することが大切です。

摩耗部品の交換時期はどのように判断すればよいですか?

運転条件や固形分の性質によって摩耗の進み方は異なるため、一律の基準はありません。吐出量の低下や振動・異音の変化を定期的に確認しながら、メーカーが示す目安や過去の交換実績を参考に判断するのが基本です。

運転を停止する際に注意すべきことはありますか?

固形分が沈殿しやすい流体の場合、停止中に配管内で固形分が沈降し、再起動時の詰まりにつながることがあります。停止・起動の手順や配管内の洗浄方法をあらかじめ決めておくと、トラブルを防ぎやすくなります。

ダイヤフラムポンプは、どんな現場でも使えますか?

あらゆる条件に万能というわけではありません。エア駆動式は圧縮空気源が、電動式は電源設備が必要になるほか、遠心式に比べて吐出量が変動しやすい点など、方式ならではの特性もあります。粒径が大きい、濃度が高い、空運転のリスクがあるといった過酷な条件で強みを発揮しやすい方式のため、扱う流体や運転条件、設置環境を踏まえて適合するか確認することをおすすめします。