2026.10.07
- 基礎知識
- 産業用ポンプ
高粘度液の移送にギヤポンプが向いている理由|渦巻ポンプとの違い

ギアポンプは、かみ合う歯車のすき間に液体を閉じ込めて送り出すポンプです。羽根車の回転で液体に勢いをつける渦巻ポンプは、液体がドロッとしているほど流量や効率が落ちやすくなります。一方のギアポンプは、粘度が高い液体でも一定量を安定して送れます。そのため、樹脂や重油などの移送で広く使われています。
この記事でわかること
- ギアポンプの仕組みと渦巻ポンプとの違い
- 粘度が上がると2つのポンプで何が変わるのか
- 高粘度液をギアポンプで送るときの注意点
送りたい液の粘度や温度がはっきりしていなくても大丈夫です。液の名称と使用条件をお知らせいただければ、ギアポンプと渦巻ポンプのどちらが向いているかを一緒に整理します。
ギアポンプとはどんなポンプか
ギアポンプは、ケーシングの中で2つの歯車がかみ合いながら回転するポンプです。歯と歯のすき間に液体を閉じ込め、吸込側から吐出側へ運びます。容積式ポンプとは、決まった容積の液体を区切って押し出す方式のポンプのことです。ギアポンプはこの容積式に分類されます。回転1回あたりに送る量がほぼ決まっているので、回転数を変えれば流量も比例して変わります。
ギアポンプが液を送る3ステップ
- 1吸い込む歯車がかみ合いから離れるところで空間が広がり、液が入り込みます
- 2閉じ込めて運ぶ歯と歯のすき間に液を閉じ込めたまま、ケーシングに沿って運びます
- 3押し出す歯車が再びかみ合うところで空間が狭まり、液が吐出側へ押し出されます

ギアポンプには2つのタイプがあります。大きな歯車の内側に小さな歯車が入る内接ギアポンプと、同じくらいの大きさの歯車が外側同士でかみ合う外接ギアポンプです。どちらも動く部品が少なく構造が単純です。一般的には自吸性(呼び水なしで液を吸い上げる能力)があり、回転方向を逆にすれば液の流れる向きも逆にできます。
渦巻ポンプとギアポンプの根本的な違い
渦巻ポンプは、羽根車(インペラ)を高速で回し、その遠心力で液体に勢いと圧力を与えるポンプです。水の移送などで最も広く使われています。渦巻ポンプは圧力をつくった結果として流れが生まれます。ギアポンプは液を押し出して流れをつくり、その結果として圧力が生まれます。両者の性格の違いはここから来ています。
液を送る考え方の違い
渦巻ポンプ
- 羽根車が高速で回る
- 液に勢いと圧力がつく
- 結果として流れが生まれる
ギアポンプ
- 歯車が液を区切る
- 決まった量を押し出す
- 結果として圧力が生まれる
この違いは運転の仕方にも表れます。渦巻ポンプは配管の抵抗が増えると流量が減ります。ギアポンプは抵抗が変わっても流量がほとんど変わりません。逆にいうと、ギアポンプの吐出側をふさぐと圧力が上がり続けてしまいます。

粘度が上がると何が起きるのか
粘度とは液体のねばりの強さ(流れにくさ)を表す値で、日本ではmPa·s(ミリパスカル秒)やcSt(センチストークス)という単位がよく使われます。渦巻ポンプの性能表は一般的に水を基準にしています。粘度の高い液を送ると内部の摩擦損失が大きくなるため、流量・揚程・効率が下がり、必要な動力は増えるとされています。
粘度と流量の関係(傾向を示すイメージ図)
- ギアポンプ:ほぼ横ばい
- 渦巻ポンプ:粘度が上がるほど低下
実際の数値は機種や運転条件によって異なります。
ギアポンプでは、吐出側から吸込側へ歯車のすき間を通って液が漏れ戻ります。これをスリップと呼びます。粘度の高い液はこのすき間を埋めるためスリップが減り、体積効率(理論上の送り量に対して実際に送れる量の割合)は上がる傾向にあります。ただし粘度が上がればギアポンプでも必要な動力は増えるため、モーターの容量は液の条件に合わせて選定します。
粘度が上がったときの変化
渦巻ポンプ
- 流量下がる
- 揚程下がる
- 効率下がる
- 必要な動力増える
ギアポンプ
- 流量ほぼ一定
- スリップ減る
- 体積効率上がる傾向
- 必要な動力増える
今お使いの渦巻ポンプで流量が出ない、モーターが過負荷になるといったお悩みはありませんか。液の性状と運転条件をお知らせいただければ、ギアポンプへの置き換えが適しているかを確認します。
高粘度液をギアポンプで送るときの注意点
粘度が高い液は、ポンプに入り込むまでに時間がかかり、配管の中でも流れにくくなります。そのため回転数や配管、液の温度をあわせて考えることが大切です。
低速で回す
歯のすき間に液がしっかり入り込む時間をつくるため、減速機と組み合わせて低速で運転するのが一般的です
吸込配管を太く短く
配管の抵抗を減らし、ポンプが液を吸い込みやすい状態をつくります
温めて粘度を下げる
温度で粘度が下がる液には、ジャケット(温水や蒸気で本体を保温する構造)付きの機種を選ぶ方法があります
もうひとつ重要なのは吐出側を閉め切らないことです。ギアポンプは吐出側がふさがると圧力が上がり続け、ポンプや配管を傷める恐れがあります。また硬い粒子を含む液は歯車やすき間を摩耗させるため、液の成分に合わせた材質選びも必要です。
吐出側がふさがったときに起きること
- 吐出側のバルブが閉まる・配管が詰まる
- 行き場のない液で圧力が上がり続ける
- ポンプや配管が傷む恐れ
安全弁(リリーフ弁)を付けて圧力の上限を守るのが基本です
選定時に確認しておきたい項目
- 運転温度での粘度粘度は温度によって大きく変わるため
- 必要な流量と吐出圧力回転数とモーター容量を決めるため
- 吸込側の配管条件吸い込み不良やキャビテーション(液中に気泡が発生する現象)を防ぐため
- 固形物や粒子の有無摩耗対策と材質選定のため
- 温めて送る必要があるかジャケット付きの機種を選ぶかを判断するため
- 安全弁の有無と設定吐出側が閉塞したときにポンプと配管を守るため

ギアポンプが活躍する現場の液体
ギアポンプは油類や化学品のほか、食品分野でも粘度の高い原料の移送に使われています。粘度が高い液や温度によって粘度が変わる液を、決まった量で安定して送りたい現場で特に力を発揮します。
油類
重油、潤滑油、作動油など
化学品
樹脂、接着剤、塗料、インク、シーリング材など
食品原料
水あめやチョコレートなど粘度の高い原料
一方で、水のように粘度の低い液を大流量で送る用途では、一般的に渦巻ポンプのほうが有利です。どちらが優れているかではなく、液の性状と求める送り方で使い分けることが大切です。
使い分けの考え方
渦巻ポンプが一般的に有利
水に近い低粘度の液を大流量で送る
ギアポンプが力を発揮
粘度の高い液や粘度が変わる液を定量で送る
当社は正規代理店として、高粘度液の移送で実績のあるバイキングポンプの内接ギアポンプを取り扱っています。液の名称と温度、必要な流量がわかれば、適した機種と回転数の組み合わせをご提案します。
よくある質問
粘度がどのくらいになったらギアポンプを検討すべきですか?
一概には言えません。渦巻ポンプでどこまで対応できるかは、機種や流量、温度などの条件によって変わるためです。渦巻ポンプの性能を補正すると流量や効率が大きく下がる場合や、液の粘度が季節や温度で変わる場合は、ギアポンプを含む容積式ポンプを検討する目安になります。
ギアポンプは吐出側のバルブで流量を調整できますか?
渦巻ポンプのように吐出側のバルブを絞って流量を調整する使い方はおすすめできません。ギアポンプは吐出側をふさぐと圧力が上がり続けるためです。流量はインバータで回転数を変えて調整するのが一般的で、安全弁で圧力の上限を守ることが基本になります。
水のような粘度の低い液にもギアポンプは使えますか?
使えます。低粘度の液に合わせて設計された機種もあります。ただし粘度が低いとスリップが増えやすくなります。また大流量・低圧で送る用途では、一般的に渦巻ポンプのほうがコストや効率の面で有利です。
内接ギアポンプと外接ギアポンプはどう使い分けますか?
一般的には、内接ギアポンプは低速運転で高粘度液の移送に多く使われます。外接ギアポンプは比較的少ない流量で高い圧力が必要な用途に使われることが多いとされています。実際には液の性状や圧力条件によって選び方が変わるため、使用条件をもとに判断することが大切です。