2026.10.06

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グリースの混合はなぜ注意が必要?|増ちょう剤・基油・添加剤の相性を解説

グリースの混合はなぜ注意が必要?

この記事のポイント

異なるグリースを混ぜると硬さが変わったり耐えられる温度が下がったりして、本来の潤滑性能が出なくなることがあります。原因は増ちょう剤、基油、添加剤の組み合わせにあります。原則は同じ銘柄を使い続けることで、変更するときは事前に相性を確認することが大切です。

この記事でわかること

  • グリースを混ぜると何が起きるのか
  • 増ちょう剤・基油・添加剤それぞれの相性の考え方
  • 混合を避けられないときの判断と確認の手順

グリースの混合はどんな場面で起きる?

グリースの混合とは、すでに機械に入っているグリースに種類や銘柄の異なるグリースが加わることです。意図して混ぜるケースは少なく、多くは補充の場面で起こります。設備メーカー指定の銘柄と現場で常備している汎用グリースが違っていたり、購買の都合で銘柄を切り替えたりしたときが典型的な例です。

グリースは基油(ベースとなる液体の油)、増ちょう剤(基油を半固体に保つ成分)、添加剤(酸化防止や耐荷重性などを高める成分)の3つで構成されています。グリースの性能はこれらの種類と組み合わせで決まるため、見た目が似ていても中身はまったく別物という場合があります。

 

基油

グリースの大部分を占める油。潤滑性や耐熱性、ゴム・樹脂への影響を左右します。

 

増ちょう剤

基油を網目状の構造で抱え込み、半固体に保つ成分。使用温度や耐水性を左右します。

 

添加剤

酸化防止剤や極圧添加剤、防せい剤など。用途に合わせた性能を付け加えます。

異なるグリースを混ぜると何が起きるのか

異なるグリースを混ぜるとちょう度(グリースの硬さを示す指標)が変化し、一般には軟らかくなるとされています。あわせて許容使用温度が低くなるなど、グリースの性状そのものが変わります。そのため原則として、同じ銘柄以外のグリースは混ぜないことが基本です。

軟らかくなったグリースは潤滑箇所に留まりにくくなり、シールのすき間から漏れ出すことがあります。また単体であれば問題なく使えた温度でも混ぜたあとは形を保てなくなる可能性があります。結果として必要な場所に潤滑剤が残らず、摩耗や発熱につながるおそれがあります。組み合わせによっては逆に硬くなるなど、予想しにくい変化が出る場合もあります。

混合から不具合に至るまでの流れ

  1. 1異なるグリースが混ざる
  2. 2増ちょう剤の構造が乱れる
  3. 3軟化・耐熱性の低下
  4. 4漏れ出し・潤滑不足
グリースが漏れる軸受け機構

増ちょう剤の相性|混合で最も影響が出やすいポイント

増ちょう剤はグリースの形を保つ骨組みにあたるため、種類が違うもの同士を混ぜると変化が大きく出やすいとされています。代表的な増ちょう剤の組み合わせごとの変化の程度は、次の表のように整理されています。

異種グリースの混合の可否(増ちょう剤別)

  カルシウム石けん アルミニウム石けん リチウム石けん ウレア
カルシウム石けん ○ △ △ ○
アルミニウム石けん △ ○ × △
リチウム石けん △ × ○ ○
ウレア ○ △ ○ ○
  • ○一般に両方の性質に応じた変化をする
  • △かけ離れた変化をすることがある
  • ×著しくかけ離れた変化をする

ただし、この種の相性表は作成元によって評価が異なることがあります。たとえばウレアは化学的に幅のある分類で、同じウレア系でもリチウム系と相性の良いものと悪いものがあるとされています。相性表はあくまで目安として使い、最終的には使用する銘柄ごとにメーカーへ確認するのが確実です。

基油の相性|混ざり合わない油の組み合わせがある

基油はグリースの大部分を占める成分で、種類によっては互いに溶け合わないものがあります。鉱油、合成炭化水素油、エステル油は比較的混ざりやすい一方、シリコーン油やフッ素油は他の基油と混合できないとされています。

基油の混合性

  鉱油 合成炭化水素油 エステル油 ポリグリコール油 シリコーン油 フッ素油
鉱油 ○ ○ ○ × × ×
合成炭化水素油 ○ ○ ○ × × ×
エステル油 ○ ○ ○ ○ × ×
ポリグリコール油 × × ○ ○ × ×
シリコーン油 × × × × ○ ×
フッ素油 × × × × × ○
  • ○混合可能
  • ×混合不可

高温用や特殊用途の箇所には合成油系のグリースが使われていることが多いため、汎用の鉱油系グリースを補充すると基油の組み合わせで問題が出る可能性があります。補充前に容器や設備の指定を確認することが大切です。

今使っているグリースと補充予定のグリースを混ぜてよいか判断できないときは、両方の銘柄名や容器ラベルの写真をお送りください。メーカーへの確認も含めて組み合わせの確認をお手伝いします。

添加剤の相性|同じ種類のグリースでも安心できない理由

増ちょう剤と基油が同じ系統でも添加剤の処方は銘柄ごとに異なります。同じ種類のグリースであっても、銘柄によって性能が大きく異なることは珍しくありません。

グリース混合の評価方法を定めた米国の規格ASTM D6185では、組成の情報だけで相性を確実に予測することはできず、同じ種類のグリースでも添加剤の違いによって不適合になる場合があるという立場をとっています。リチウム同士だから大丈夫とは言い切れないのはこのためです。

相性を確かめる3つの段階

  1. 1増ちょう剤の種類は同じか
  2. 2基油の種類は混合可能な組み合わせか
  3. 3添加剤を含めて、メーカーが混合可否を確認しているか

混合を避けられないときの考え方

原則は同じ銘柄を使い続けることです。やむを得ず別のグリースを使う場合は、少なくとも同じ種類の増ちょう剤と似た基油を持つグリースを選ぶのが基本とされています。そのうえで現在のグリースと新しいグリースの両方の銘柄をメーカーに伝え、混合可否を確認しておくと判断の根拠になります。

銘柄を切り替えるときは、一般的には古いグリースをできるだけ取り除き、新しいグリースで置き換える方法がとられます。集中給脂装置や自動給油器を使っている場合は、配管やタンクの中に古いグリースが残るため、切り替え直後は両者が混ざる期間が生じます。切り替えの手順は機器メーカーの指示に従い、しばらくは温度や漏れの様子を普段より注意して見ておくと安心です。

リチウムグリース製品ラベルとカートリッジ

自動給油器や集中潤滑装置を導入するときは、充填するグリースを今の設備に合わせて選ぶ必要があります。お使いの銘柄をもとに切り替え時に混合が起きにくい選定をご提案します。

よくある質問

同じリチウムグリースなら銘柄が違っても混ぜて大丈夫ですか?

増ちょう剤が同じであれば大きな変化は起きにくいとされますが、基油や添加剤が異なれば性状が変わる可能性があります。増ちょう剤の一致は目安のひとつであり、問題が起きないことの保証にはなりません。銘柄が異なる場合はメーカーへの確認をおすすめします。

うっかり別のグリースを補充してしまいました。すぐに交換が必要ですか?

混ざったからといって直ちに故障するとは限りません。ただ、軟化による漏れや耐熱性の低下が起こる可能性があるため、温度や異音、グリースのにじみを普段より注意して確認してください。重要な設備であれば、機器メーカーやグリースメーカーに相談したうえで、元のグリースへの置き換えを検討すると安心です。

グリースの相性表はどこまで信用できますか?

相性表は増ちょう剤や基油の組み合わせから一般的な傾向を示したもので、作成元によって評価が異なる場合があります。混合の評価にはASTM D6185という試験方法があり、2種類のグリースを複数の比率で混ぜて性状の変化を確認します。重要な設備で銘柄を変える場合は、こうした試験データやメーカーの見解を確認するのが確実です。

自動給油器や集中給脂装置でグリースの銘柄を変えるときの注意点は?

配管やタンクに古いグリースが残るため、切り替え直後は新旧のグリースが混ざった状態で給脂されます。相性が悪い組み合わせだと配管内での硬化や軟化が起きる可能性もあるため、切り替え前に両銘柄の混合可否を確認し、機器メーカーの手順に沿って行ってください。